今日思い出したこと

朝食の片づけを終えて、私は口笛を吹きながら夫の傍を通りかかった。

「機嫌がいいみたいだね?口笛を吹くときは、いつも機嫌がいい時だよ。」と夫が言った。

「うん、そうだね。でも、なんでそう思うの?」と私。

「だって機嫌の悪い時に、口笛を吹く気になれないでしょう。」

そう言われて納得した私は、ふと祖母の言葉を思い出した。

「うちの田舎では口笛のことを『うそ』っていうんだよ。子供の頃、夜に口笛を吹くと、おばあちゃんに、夜に『うそ』を吹いたらいけないと言われて、いつのまにか夜には吹かなくなったんだ。理由は聞かなかったけど、何か霊的なことがあるのかもしれない。」

「ああ、そうかもしれないね」と夫もうなずいた。

うちの家系は霊感が強いのかもしれない・・・」

 

 私は子供の頃、おばあちゃんと畑に行くのが好きだった。どうしてかというと、おばあちゃんそのものも好きだったけれど、畑に行くと、いつもとは違う話をしてくれたから・・・。なかでも一番記憶に残っているのは、おばあちゃんのお母さん、つまりひいばあちゃんが、一度死にかけた時の話だ。細かいことは忘れてしまったけれど、誰かに「お前が来るところではない!!」と言われて、追い返されて目を覚まし、生き返ったらしい。

子供の私に、畑仕事の手伝いがどれほどできていたのか、むしろいつもより時間がかかったかもしれない。なにしろおばあちゃんの話に興味津々で、夢中になって聞いていたから・・・

あの世でも、誰かにいろんな話をしている気がします。

 

・・・で、霊的な話で思い出したのが、『桧原湖の思い出』

どうやら夫もそうだったようで、「そういえば桧原湖で泊まった時・・・」とはじまった。

 

 今から20年ぐらい前の5月の連休、私達は子供達を連れて、2泊旅行に出かけた。

行先は福島県裏磐梯桧原湖近くのロッジ。夫の仕事関係の知り合いがロッジを開いたという話を聞いて、そこに決まった。

裏磐梯にはまだ雪が残っていて、往きの車の窓から、可愛らしい雪だるまが見えた。

その日は、桧原湖でのんびり遊んだ。

足漕ぎボートで、私は息子と、夫は娘たちとに分かれて乗ったのだが、どちらもものすごく不安定で、モーターボートが近くを通った時は、はんぱなく揺れて、お互いのボートを見ては心配し、「沈んだらどうしよう・・・」という恐怖を存分に味わった。

時間内に戻れたのが不思議なくらいでした。

 ロッジに戻り、お風呂と夕食を終えて、みんなぐっすり眠りにつきました。

私一人を除いては・・・

浅い眠りの中、誰かが私の左手首をつかみ、ものすごい力で引っ張るのです。ひんやりした空気を感じながら、私は、壁の中にひきずり込まれるような、でもそこは、壁ではなくて違う空間のような感覚に襲われました。

私は、言葉にならない静かな叫びをあげていたようにも思います。

きっと何かがあったんだ。この辺りで・・・

 

 翌日、磐梯噴火記念館に行ってみた。

そこでわかったのは、明治21年7月15日に会津磐梯山が噴火して、裏磐梯が生まれたこと

山頂部分での噴火は10数回に及び、最後の噴火では山体が崩壊し、大量の岩石、土砂などが時速80㎞を超す爆風に乗って流れ下り、北麓の谷を埋め、磐梯山の北側は巨大な高原大地になった。

この崩壊によって、いくつもの川がせき止められ、桧原湖ができた。

たくさんの人々や家屋、田や畑が被害を受けたことでしょう。

桧原湖の湖底には、桧原村が水没しており、現在でも昔の集落にあった神社の鳥居や墓石が顔を出す場所があるそうです。

 

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